ダービー 井崎脩五郎

◇続いてみせるか「世界のエース」

 ワールドエースとは大きく出たよなあ。「世界のエース」である。

 これで、名前とは裏腹に、未勝利戦で後ろのほうばかり走っていたら「えれえ名前付けちゃったなあ」とオーナーは照れ、「オレだって恥ずかしいよ」と馬もグレちゃうところだが、デビュー以来4戦して、

 新馬    1着

 若駒S   2着

 きさらぎ賞 1着

 若葉S   1着

 と、勝ちまくっているのは、ご同慶の至りと言うしかない。

 これまでの皐月賞優勝馬のなかで、もっとも景気がいい名前だったのは、「勝つ」「トップ」「エース」を全部ひっかけたカツトップエース。1981年(昭和56)年の優勝馬である。

 デビュー以来、勝ったのはダート1000メートルの新馬戦と、芝1400メートルの400万下だけ。オープンでは(6)(4)(10)着(各0秒7、1秒1、1秒9差)とまったく通じず、必勝を期した前走800万下のバイオレット賞でも0秒8差の4着に凡走していたカツトップエースは、皐月賞に出ることはできたものの、17頭立ての16番人気だった。

 ところがここで、カツトップエースに好運が重なるのだ。

 カツトップエースのそれまでの2勝は、先行して、三角先頭あるいは四角先頭で押し切ったものなのだが、そういう先行タイプのカツトップエースにとって、うってつけといっていい1枠1番をデビュー以来初めて引き当てたのである。

 しかも、皐月賞トライアルのスプリングSを圧勝していたサンエイソロンが、大外18番枠を引いてしまったうえに、脚部不安で出走取り消し。

 さらにレースでは、先手を取って4ハロン目を13秒6という超スローに落としたのに、カツトップエースをかわしていく馬がなく、6ハロン通過1分14秒1という緩ペースに持ち込んで、まんまと逃げ切ってしまうのだ。「勝つ」「トップ」「エース」という名前どおりの大仕事を、皐月賞でやってのけたのである。そしてカツトップエースはこのあと、ダービーまで勝ってしまい、自分の名前が大風呂敷ではないことを、天下に示してみせたのである。

 ワールドエースも、皐月賞を勝ち、ダービーを勝ち、世界に出て行って大一番を勝ってみせれば、「さすがワールドエース」と言われることになるだろう。

 ワールドエースの目下の唯一の不安は、前走、非重賞の若葉Sをマイナス8キロというかなり絞った馬体で勝ってきたこと。

 このワールドエースのように、「前走非重賞戦をマイナス体重で勝ってきたキャリア4戦以上の馬」は、1975(昭和50)年以降の皐月賞で、[03145]とじつは勝ったことが一度もないのである。

 しかし、前走は非重賞だが、2走前に重賞きさらぎ賞を勝っているからワールドエースはセーフという見方も可能。さあ、どっちか。

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